• 「音楽祭は雷鳴と共に」11 楽団アレス・ムジク

     

    「アマデウス、エルク! もっと慎重に運びなさい」

     

     レザンスの焼け野原に少女の声が響く。

    「傾いているわ。それでは汚れてしまいます。カール!」

    「はい、お嬢様」

     ぬかるんだ土に赤い絨毯を敷く。その上に鎮座した特大コンサート・グランド<残響(ナーハ・ハル)>は、秋の柔らかな陽射しを浴びて艶めいて見えた。

     ブリーゼマイスター家の執事カールは、腰に差した革製の鞘から得物を抜く。それが巨大な音叉であると見とめた観衆からどよめきが起こった。それが大きく振り上げられ空を薙ぐと、風が歪んでぼんやりとしたラ音を彫り出す。音を聴き取ったフローリアンが<残響>の鍵盤を一つ叩いて、うなずいた。それからガウスが加わり、ヴィンター朝に生きた天才少女イステルの18時間にも及ぶ大作『ピアノと管弦楽奏者そして歌える者のための練習曲第2番~プレエ~』のさわりを連弾で演じる。客席から「なんだぁ、その堅苦しい曲は」や「酒が美味くなるのを演ってくれよ!」などとひやかす声が湧いたが、どれもが陽気で、皆この場を楽しんでいるのだ。カールの音叉の調律も連弾の調整も演出で、本来ならこんなことはしない。だが、それがこの寂しいレザンスに陽気な風を運び込む。嫌な記憶を一時薄れさせてくれる、そんな演奏会の幕開けを期待させる。

     

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    「アマデウス、エルク! もっと慎重に運びなさい」

     

     レザンスの焼け野原に少女の声が響く。

    「傾いているわ。それでは汚れてしまいます。カール!」

    「はい、お嬢様」

     ぬかるんだ土に赤い絨毯を敷く。その上に鎮座した特大コンサート・グランド<残響(ナーハ・ハル)>は、秋の柔らかな陽射しを浴びて艶めいて見えた。

     ブリーゼマイスター家の執事カールは、腰に差した革製の鞘から得物を抜く。それが巨大な音叉であると見とめた観衆からどよめきが起こった。それが大きく振り上げられ空を薙ぐと、風が歪んでぼんやりとしたラ音を彫り出す。音を聴き取ったフローリアンが<残響>の鍵盤を一つ叩いて、うなずいた。それからガウスが加わり、ヴィンター朝に生きた天才少女イステルの18時間にも及ぶ大作『ピアノと管弦楽奏者そして歌える者のための練習曲第2番~プレエ~』のさわりを連弾で演じる。客席から「なんだぁ、その堅苦しい曲は」や「酒が美味くなるのを演ってくれよ!」などとひやかす声が湧いたが、どれもが陽気で、皆この場を楽しんでいるのだ。カールの音叉の調律も連弾の調整も演出で、本来ならこんなことはしない。だが、それがこの寂しいレザンスに陽気な風を運び込む。嫌な記憶を一時薄れさせてくれる、そんな演奏会の幕開けを期待させる。

     

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    「アマデウス、エルク! もっと慎重に運びなさい」

     

     レザンスの焼け野原に少女の声が響く。

    「傾いているわ。それでは汚れてしまいます。カール!」

    「はい、お嬢様」

     ぬかるんだ土に赤い絨毯を敷く。その上に鎮座した特大コンサート・グランド<残響(ナーハ・ハル)>は、秋の柔らかな陽射しを浴びて艶めいて見えた。

     ブリーゼマイスター家の執事カールは、腰に差した革製の鞘から得物を抜く。それが巨大な音叉であると見とめた観衆からどよめきが起こった。それが大きく振り上げられ空を薙ぐと、風が歪んでぼんやりとしたラ音を彫り出す。音を聴き取ったフローリアンが<残響>の鍵盤を一つ叩いて、うなずいた。それからガウスが加わり、ヴィンター朝に生きた天才少女イステルの18時間にも及ぶ大作『ピアノと管弦楽奏者そして歌える者のための練習曲第2番~プレエ~』のさわりを連弾で演じる。客席から「なんだぁ、その堅苦しい曲は」や「酒が美味くなるのを演ってくれよ!」などとひやかす声が湧いたが、どれもが陽気で、皆この場を楽しんでいるのだ。カールの音叉の調律も連弾の調整も演出で、本来ならこんなことはしない。だが、それがこの寂しいレザンスに陽気な風を運び込む。嫌な記憶を一時薄れさせてくれる、そんな演奏会の幕開けを期待させる。

     

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    「アマデウス、エルク! もっと慎重に運びなさい」

     

     レザンスの焼け野原に少女の声が響く。

    「傾いているわ。それでは汚れてしまいます。カール!」

    「はい、お嬢様」

     ぬかるんだ土に赤い絨毯を敷く。その上に鎮座した特大コンサート・グランド<残響(ナーハ・ハル)>は、秋の柔らかな陽射しを浴びて艶めいて見えた。

     ブリーゼマイスター家の執事カールは、腰に差した革製の鞘から得物を抜く。それが巨大な音叉であると見とめた観衆からどよめきが起こった。それが大きく振り上げられ空を薙ぐと、風が歪んでぼんやりとしたラ音を彫り出す。音を聴き取ったフローリアンが<残響>の鍵盤を一つ叩いて、うなずいた。それからガウスが加わり、ヴィンター朝に生きた天才少女イステルの18時間にも及ぶ大作『ピアノと管弦楽奏者そして歌える者のための練習曲第2番~プレエ~』のさわりを連弾で演じる。客席から「なんだぁ、その堅苦しい曲は」や「酒が美味くなるのを演ってくれよ!」などとひやかす声が湧いたが、どれもが陽気で、皆この場を楽しんでいるのだ。カールの音叉の調律も連弾の調整も演出で、本来ならこんなことはしない。だが、それがこの寂しいレザンスに陽気な風を運び込む。嫌な記憶を一時薄れさせてくれる、そんな演奏会の幕開けを期待させる。

     

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    「アマデウス、エルク! もっと慎重に運びなさい」

     

     レザンスの焼け野原に少女の声が響く。

    「傾いているわ。それでは汚れてしまいます。カール!」

    「はい、お嬢様」

     ぬかるんだ土に赤い絨毯を敷く。その上に鎮座した特大コンサート・グランド<残響(ナーハ・ハル)>は、秋の柔らかな陽射しを浴びて艶めいて見えた。

     ブリーゼマイスター家の執事カールは、腰に差した革製の鞘から得物を抜く。それが巨大な音叉であると見とめた観衆からどよめきが起こった。それが大きく振り上げられ空を薙ぐと、風が歪んでぼんやりとしたラ音を彫り出す。音を聴き取ったフローリアンが<残響>の鍵盤を一つ叩いて、うなずいた。それからガウスが加わり、ヴィンター朝に生きた天才少女イステルの18時間にも及ぶ大作『ピアノと管弦楽奏者そして歌える者のための練習曲第2番~プレエ~』のさわりを連弾で演じる。客席から「なんだぁ、その堅苦しい曲は」や「酒が美味くなるのを演ってくれよ!」などとひやかす声が湧いたが、どれもが陽気で、皆この場を楽しんでいるのだ。カールの音叉の調律も連弾の調整も演出で、本来ならこんなことはしない。だが、それがこの寂しいレザンスに陽気な風を運び込む。嫌な記憶を一時薄れさせてくれる、そんな演奏会の幕開けを期待させる。

     

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