歌劇『大いなる研鑽―Das schönste aller Geheimnisse』より第2幕「7つの音」

 

9 シュトレーメルの新作オペラ」で明らかとなった、オペラの第2幕(一部)。

 

 

歌劇『大いなる研鑽―Das schönste aller Geheimnisse』より第2幕「7つの音」

作詞・作曲:ハンス・シュトレーメル

 

登場人物(音楽大祭で演じる歌い手)

ルーカス(アレクシス・ヴァント)…行商人の青年。ヨルトを探して旅をしている。

ニナ(ダニエラ)…王妃の侍女で衣装係。ルーカスに恋をする。

マティアス(エイミール・ドルノ)…王都に帰還した騎士。ニナに執心している。

セヴェリ…(フランツ・クライバー)マティアスの戦友。

ヨルト(フーゴ・ブック)…世界の秘密を知るという占い師。

 

(第1幕のあらすじ)

 世界の秘密を知るという占い師ヨルト。彼は一度だけ、行商人の青年ルーカスに奇跡を見せる。それは、世界の始まりと終わりを示していた。この世は破滅に導かれる。近いうちに。ルーカスは、それを阻止するために、ヨルトにもう一度会おうと旅を続けている。

 王都に立ち寄り、東方の工芸品を王妃へ献上したルーカス。そこで、彼を見染めたのは、王妃付きの侍女ニナだった。

 そして第2幕へ――

 

(王都の噴水広場)

ルーカス「また一足違いだ。彼は、僕を試しているのか。ヨルト。世界の秘密を知るという男。僕は昔、彼の奇跡を目の当たりにした。一度だけ。見てしまった。だから知りたい」

ニナ「ルーカスさん」

ルーカス「知っているだけでは。それだけでは無力だ。それは罪だ。花が咲かぬように手折ってしまう非情の人だ。ヨルト。貴方は永遠に口を閉じているつもりなのか。恐ろしい竜が目覚めてしまおうとも、大勢の人が死のうとも、火の海が王都をのみ込んでしまおうとも!」

ニナ「ルーカス、待って! 待って、話を聞いて!」

ルーカス「君は。たしか城の謁見の間で」

ニナ「覚えていてくださったのね。嬉しい」

ルーカス「忘れるはずはない。君は王妃にふさわしい、美しい侍女だ」

ニナ「明日は雪かしらという日に、私の胸はとても温かい。その言葉だけで、その言葉だけで十分」

ルーカス「それで、君はどうして僕に声をかけるんだ? こんな場所まで、それも一人きりで」

ニナ「一人きりであることが重要なのです。ルーカスさん。ルーカス。貴方は、今たしかにヨルトと言いましたわ」

ルーカス「ああ、言った。隠すことはしない。僕は彼を探して旅をしているのだから」

ニナ「なんということでしょう。私の唇は凍りつき、指先は寒さで震えているわ」

ルーカス「それはいけない。医者に診てもらおう」

ニナ「いいえ、いいえ、ルーカス。こればかりはお医者様でもどうにもできないのです。だって、貴方は王都を去ってしまうつもりなのですから」

ルーカス「僕は王都を去るつもりだ。数日の後に。僕は行商人だ。次の町へ商品を届けなければ。それよりも、そう、いつも僕の先を行くヨルトに出会わなければ」

ニナ「ヨルト。世界の秘密を知るという占い師。私は彼を恨みます。彼に嫉妬します。貴方を遠くへさらってしまう人だから」

ルーカス「美しい侍女ニナ。君はヨルトを知っているのかい? それを僕に伝えるために、わざわざこの広場まで?」

ニナ「ええ、そうよ、ルーカス。王妃様が貴方に伝えるようにと。ヨルトから、世界の秘密を聞き出す方法を」

ルーカス「それは有難い! 僕は必ず彼に追いつき、そしてまたこの地へ戻って来るだろう」

ニナ「私はそれを待っているわ。待ち続けているわ。だったら、ルーカス。貴方は知っておくべきだわ。王妃様の忠告を」

ルーカス「教えてくれ、ニナ。僕はそのためならば、どのような代償を払っても構わない!」

ニナ「戻って来てくださると誓って。必ず」

ルーカス「誓うとも。必ず戻って来る」

ニナ「打ち明けるわ、頼もしい人。ヨルトと真の対話を果たすためには、7つの音を集めなければならないことを」

ルーカス「7つの音は、どこに行けば手に入るのか?」

ニナ「秘密の場所よ。魂の眠る場所。ひっそりとした場所。それから、貴方は知らなければならない。7つの音を葬るための音もまた、この世界には存在していることを。貴方はどちらかを選ばなければならないでしょう」

ルーカス「僕は知った、そしてすべての音を知るだろう。ヨルトに会って、探すための手がかりを得よう」

ニナ「いいえ、ルーカス。選ぶのはどちらか。貴方はヨルトの僕となるか、彼の暗殺者となるか、どちらかの運命を生きることになるわ。私はただ貴方を待つだけ……」

 

※『別れの歌』~ニナのアリエ~

 

(噴水の側で泣くニナに近寄るマティアス)

マティアス「ニナ、ニナ。どうしてそんなに悲しむ必要があるのだ」

セヴェリ「マティアス、君にも幸運が巡ってきたということだ」

マティアス「あの行商人は旅立ってしまったのか」

セヴェリ「邪魔者はいなくなった」

マティアス「あれは利用価値がある。もしもヨルトに会うことができたなら」

ニナ「利用するなんて!」

マティアス「おお、ニナ。ニナ。彼には彼の運命があるのだ。7つの音を見つけ、世界に不変の静寂をもたらす役目か、7つの音を封じ、人同士の争いを認め、恐ろしい竜を、化け物を導く役目か」

ニナ「ひどい、ひどいわ」

マティアス「彼自身が選ぶのだ。大いなる力を得るのだ」

セヴェリ「マティアス、君にも幸運が巡ってきたということだ。彼女をなぐさめ、王と王妃を御救いするのが君の役目だ」

ニナ「彼は必ず戻ると言ったわ!」

(ニナは走り去る)

マティアス「彼は世界の秘密を聞くだろう。ヨルトの奇跡を見たのなら」
セヴェリ「君がそうであったように!」
マティアス「そして探そうとするだろう、7つの音を。もしくは、それを破壊する音を。私は彼を助けるふりをして、すべてを手に入れよう。王の信頼も、二ナの愛も――思いのままだ!」

 

※『7つの音と破壊』~マティアスのアリエ~

 

 

※『別れの歌』『7つの音と破壊』は別話で紹介します。