富士見L文庫『あやし絵刺繍幻燈譚』発売のお知らせと京繍取材記

 
史間です。
新作を出していただくことになりましたので、お知らせいたします。
6月15日発売『あやし絵刺繍幻燈譚』富士見L文庫
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主人公兄弟を美しく描いてくださったのは、北沢きょう様です。
背景に描き込まれた明治銀座煉瓦街にもうっとりします/////
 
富士見L文庫公式サイトで第1幕を試し読みできます。
★あらすじ
古寺織物に勤める原画師の早苗と刺繍師の瑞穂は、性格も見た目も正反対の兄弟。二人はある日、人にとり憑いているという刺繍の検分を依頼される。一族に伝わる刺繍の「秘術」で事件を解決しようとする二人だが……(富士見L文庫公式サイトより)
 
お人好しの兄・早苗と、強気で言いたい放題の弟・瑞穂が主人公です。
二人が互いを想い合い、でもかばい合うだけがそうではないと気づき、共に強く生きてゆこうとする物語です。
 
また、明治22年が舞台になっています。小難しいことは書いていません。この時代の風景を楽しんでいただけたらと思います。牛鍋屋でなぜかアイスクリーム食べていたり、汽車に乗って横浜に行ったり、幼馴染社長のわがままで横浜居留地のホテルに泊まったりします。
 
今回は刺繍を題材に選び、主人公の一人、弟の瑞穂を繍師(ぬいし=刺繍職人)にしました。執筆にあたっては、京都で1200年以上続く日本刺繍・京繍(きょうぬい)を参考にしています。
現在は30種ほどの技法を用いる日本刺繍ですが、工夫と組み合わせで実は数百種にもなるそうです。すごい!
京繍のスゴ技動画はこちらをどうぞ。

引用元:京都伝統産業ふれあい館ホームページ「映像ギャラリー」
 
針を生地の表から裏へ通し、裏から表へと返す。ただ、その繰り返し。一見地味で単純な作業ですが、そこから広がる光と色彩、立体の世界は果てしないです。実演も何度か拝見いたしましたが、静かなのに迫力があります。まるで魔法のようだと思いました。その時の驚きと感動も『あやし絵刺繍幻燈譚』に込めています。
日本刺繍に興味のある方、明治時代がお好きな方、兄弟ものにときめきを覚えるという方! お手に取っていただけると嬉しいです。
 
以下、京繍の取材&体験記です。
あとがきやtwitterでは書けなかったことを含め少し長くなりますので、興味のある方だけどうぞ。

 
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【京繍取材&体験記】
 
『あやし絵刺繍幻燈譚』では、刺繍の技法について事細かに描くのではなく、刺繍に込める想いのほうに重心を置いています。
その描写に際して、京繍の伝統工芸士・吉岡一郎先生にたくさんヒントをいただきました。着物や帯などへの刺繍の他、文化財の復元、コラボレーションなど幅広くご活躍中の方です。
 
昨年の11月下旬。京都では紅葉が見ごろを迎えていました。
電話で取材のアポイントをした時の印象通り、ご自宅にお邪魔した私を迎えてくださった吉岡先生は、物腰の柔らかな素敵な方でした(奥様も明るくて笑顔が素敵な方です)。
 
取材では、刺繍のなりたちから現代までの歴史、「刺繍」と呼ばれるようになった時期・理由など、貴重な文献を拝見しながら、詳しく、本当にびっくりするくらい詳しくお話いただきました。
作中でも大いに活用させていただいておりますので、ここではあまり詳しく書けません。無念。瑞穂のセリフのところどころに先生の言葉もちりばめています。
 
今回じっくりとお話を伺い、職人さんは単に技を継承するだけではなく、自分たちが扱う技にはどういう歴史と想いが込められているのかをしっかり理解されているのだと思いました。かっこいいです。
 
平繍(ひらぬい=刺繍の技法の一つ)で正円を仕上げる作業にも挑戦しました。
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繍台(ぬいだい=刺繍する生地を張る台)に向かい、アドバイスいただきながら。
正円は難しくてごまかしのきかない形ですが、だからこそマスターする意味があるのだと教えていただきました。
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この時のやり取りをベースとして、作中のあるシーンを書きました。早苗が弟に教わりながら正円の刺繍に挑戦しています。
 
あとがきで自分の刺繍は早苗よりマシだみたいなことを書きましたが、改めて眺めてみると凹凸っぷりが激しい……。瑞穂には確実に笑い飛ばされる出来です。
 
実際に繍針を持って刺繍をしてみたからこそ書けるシーンも多々あり、吉岡先生には大変感謝しております。この場を借りまして御礼申し上げます。
 
これからもマイ繍台でコツコツ練習したいと思います! 見せられるものができたら、ここにもアップする……かもしれません。
何年先になることか。
 
 
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あやし絵刺繍幻燈譚 (富士見L文庫)